【野球】エースはどこに消えた?~令和に考える新時代のエース~ 第1回

【野球】エースはどこに消えた?~令和に考える新時代のエース~ 第1回

こんばんは。とらです。
我ながら、タイトルが少し大げさだと思っていますが、、、
みなさんは「エース」と聞いて、何を思い浮かべますか?
ストライカー、アタッカー、パイロット…スポーツの場合もあれば、仕事の場合もあったり。
※漫画ワンピースを想像した方は、冷静にタイトルを見返していただいて検索結果にお戻りください(笑)

今回はタイトルに書いてある通り、野球の、つまり「エースピッチャー」についてのお話です。
エースとは一体何なのか?その存在について、少し考えてみました。

何回かに分けて書く予定にしていますが、今夜はその第1回です。

タイミングよく、このような記事も出ました…。

沢村賞、19年ぶり該当者なし 200イニング&10完投以上はゼロ「沢村さんの名前に傷を付けると…」

「沢村賞=球界を代表するエース」であることは間違いないです。

その沢村賞受賞者が出なかったことは、2019年、さらには今後も球界のエースと呼ばれる存在が消える、まさにタイトルのごとく「エースはどこに消えた?」と言われる時代の始まりなのだろうか?

そんな想いからこの記事を書き始めました。

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エースとは

まず、そもそも「エース」という言葉について。

wikipediaにはこのようにあります。

英語で「第一人者」の意味

これでは少しわかりづらいですが、野球に関連する説明が続きます。

チームの主力メンバー。
野球の場合は、チームで最高の先発投手(エースピッチャー)のこと。
打撃や守備の第一人者に対しては使われないことが多いが、チーム最高の長打力を持つ打者が「エーススラッガー」と呼ばれることはある。
アメリカ野球初期の投手エイサ・ブレイナードに由来するとする俗説がある。

「チームで最高の先発投手」
エースって何?と聞かれたら、この説明でしっくり来る気がします。

エースの条件

では、エースと呼ばれるには何が必要なのか?
エースの条件について、考えてみます。

「チームで最高の先発投手」と思われるからには、それなりの結果を残しているはずです。
そして、ご存じとは思いますがエースと呼ばれるピッチャーにふさわしい賞というものが存在します。
それが「沢村栄治賞」(通称:沢村賞)です。
※アメリカ・メジャーリーグでは「サイ・ヤング賞」。ただ、選考対象や選考基準が沢村賞と異なります。

エースの条件・沢村賞

沢村賞はwikipediaにこう書かれています。

1947年、読売新聞社が戦前のプロ野球黎明期において豪速球投手として名を馳せた沢村栄治の栄誉と功績を称えて制定。

その年の最高の先発投手に与えられる賞です。

この沢村賞には選考基準が存在します。
ちなみにこの7項目をすべて満たす必要はありません。

登板試合数25試合以上
完投試合数10試合以上
勝利数15勝以上
勝率6割以上
投球回数200イニング以上
奪三振150個以上
防御率2.50以下

上記に加え、2018年度より7回で自責点3点以内という独自基準のクオリティー・スタート(QS)率を補則項目としているそうです。
※メジャーリーグでは6回自責点3点以内がQSです。

現代でかなり厳しいのは特に「完投試合数」「投球回数」です。

なぜ厳しいのか。キーワードは「分業制」
※当たり前すぎて、キーワードになっているか甚だ疑問…(汗)

QS率を加味することにしたのも、分業制が進み、年々投球回数が減少していることに配慮してだとは思いますが、「6回ではなく、7回」にしたところに「選考委員が考えるエース像」がうっすら透けて見える気もします。

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直近10年の沢村賞受賞者

では、直近10年の沢村賞受賞者、つまり近年、球界のエースと認められたピッチャーはどのような顔ぶれだったのでしょうか。

年度受賞者所属登板完投勝利勝率投球回奪三振防御率
2009涌井秀章西武271116.727211.21992.30
2010前田健太広島28615.652215.21742.21
2011田中将大楽天271419.792226.12411.27
2012攝津正ソフトバンク27317.773193.11531.91
2013田中将大(2)楽天288241.002121831.27
2014金子千尋オリックス26416.7621911991.98
2015前田健太(2)広島29515.652206.11752.09
2016K・ジョンソン広島26315.682180.11412.15
2017菅野智之巨人25617.773187.11711.59
2018菅野智之(2)巨人281015.6522022002.14

※名前の後の()内の数字は受賞回数

受賞者を見ると、確かに2010年代を代表するピッチャーです。

マー君こと、田中将大投手の2013年の数字は2010年代のハイライトと言って過言ではないです。

ちなみに冒頭の記事にもある通り、2019年は沢村賞の該当者は無しとなりました。
ただ、選考に上がった投手はいるようです。

氏名所属登板完投勝利勝率投球回奪三振防御率
有原航平日本ハム24115.652164.11612.46
山口俊巨人26015.789170.01882.91

内容は悪くなかったのですが、残念ながら「完投試合数」「投球回数」が原因で受賞とはなりませんでした

2名とも1試合平均7イニング未満になります。

やはり分業制が進む現在の野球では、長いイニングを投げるというのは難しいようです。

減りゆく投球回数

そこで次に、近年の投球回数を見てみました。

そもそもこの記事を書くきっかけとなったのは、投球回数について調べたことがきっかけではあるのですが、それは分業制がどの程度影響を与えているのかを調べてみたかったからです。

規定投球回とは?

投球回数を見る際に知っておきたいのが、規定投球回です。

こちらもwikipediaより。

規定投球回(きていとうきゅうかい)とは、プロ野球の公式戦において、投手が最優秀防御率のタイトルを獲得する際に必要な投球回の事である。
公認野球規則9.22(b)により規定投球回は定められている。

規定投球回は以下のように定義されています。

一軍の規定投球回 = 所属球団の試合数 × 1.0
二軍の規定投球回 = 所属球団の試合数 × 0.8
(小数点以下四捨五入。ただし、2008年までは小数点以下切捨て。)

この計算でいくと、2019年の一軍の規定投球回は「143回」となります。
基本的にタイトル争いなどは、この規定投球回が足切り条件のようになっています。
つまり年間を通して、試合に出続けた(ローテーションを守れた)投手がタイトル選考の対象となります。

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投球回の変遷(2009年・2019年)

「10年ひと昔」とよく言いますが、この10年での変遷を見てみました。
特に規定投球回到達者は昨今の報道でも減少の一途と言われています。

まずは2009年と2019年の数字を比較してみます。

ここでは年間31イニング(投球回)以上を取り扱いました。
31イニング以上にしたのは、年間を通して活躍したワンポイント(特定の場面や打者に対して投げる)ピッチャーの戦績も見ようと思った為です。
※40イニング以上にしようとしたら、ホークスの嘉弥真のようなピッチャーが入らなかったので。

ちなみに2009年のピッチャー陣の顔ぶれは以下。
パ・リーグ:涌井 秀章、杉内 俊哉、田中 将大、ダルビッシュ 有、岸 孝之
セ・リーグ:石川 雅規、三浦 大輔、前田 健太、吉見 一起、館山 昌平

現役メジャーリーガー(2019年現在)が日本でバリバリやっていた時期ですね。

対象投手数(両リーグ合算)

2009年と2019年の対象となる(31イニング以上投球した)投手数はこちらです。

2009年2019年
157人188人

10年で20%ほど登板する投手数は増えています。

以前は先発 → セットアッパー → クローザーの3人で試合を終わらす場面が多かったように思いますが、近年は先発 → リリーフ → セットアッパー → クローザーと1人多くなっているように思います。

イニング数別投球者数(割合)

投球回数を3つのゾーンに分けて、それぞれの投手数がどれぐらいを占めるのか見てみました。
3つのゾーンに属するピッチャーは概ねこのような感じでしょうか。

31~80イニング以下:主にリリーフ(中継ぎ)、クローザー(抑え)、ケガで離脱期間のある先発
81~142イニング以下:ロングリリーフ(長いイニング投げられる中継ぎ)、ケガで離脱期間のある先発
143イニング以上:先発(1年間ローテーションをキープ)

イニング数2009年2019年
31~8092人(58.6%)133人(70.7%)
81~14230人(19.1%)40人(21.3%)
143~35人(22.3%)15人(8.0%)

リリーフピッチャー(80イニング以下)が増えて、規定投球回以上の先発が明らかに減っています。

2009年は81~142イニングに属するピッチャーが少ないですが、2019年は「31~80 > 81~142 > 143~の順番」にきれいに並びます。

2009年はチームに2~3人いた規定投球回以上の先発が、2019年になるとチームに1人いるかいないかという状態です。

たしかに2019年シーズンのソフトバンクホークスを考えても、シーズン通して先発の役割を果たせたのは千賀と高橋礼の2人でした。
※高橋礼はギリギリ規定投球回に到達。

下記に5イニング区切りの投手数グラフを掲載します。

グラフで見ると、より感覚的に2019年(赤棒)はグラフ左の短いイニング数に集中しているのがわかります。

逆に2009年(青棒)はグラフの右側にも分布しています。

2009年・2019年の投球回別投手数

投球回の変遷(2017~2019)

次にここ3年の推移はどうかを見てみます。

対象投手数(両リーグ合算)
2017年2018年2019年
171人173人188人
イニング数別投球者数(割合)
イニング数2017年2018年2019年
31~80116人(67.8%)111人(64.2%)133人(70.7%)
81~14230人(17.5%)45人(26.0%)40人(21.3%)
143~25人(14.6%)17人(9.8%)15人(8.0%)

ここ3年の数字を見てもジワジワと規定投球回到達者が減っているのがわかります。
分業制が進む現在の状況だと、規定投球回到達者がいないチームがどんどん増えていきそうな予感です。

反対に、リリーフピッチャー全体の価値が上がっていきそうです。

※実際に年俸に反映されているのかは要確認ですが…。

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第1回まとめ

近年の野球界は分業制が進み、長いイニングを投げられるピッチャーが減っていると報じられていましたが、ついに2019年は19年ぶりに沢村賞受賞者が出ませんでした

冒頭にも書いた通り、「エースはどこに消えた?」と言われる時代の始まりなのか?という想いから書き始めました。

第1回はエースの条件ともいえる沢村賞について、そして、分業制が進む中でピッチャーの投球回はどのように推移してきているのかを確認してみました。

第2回では、名選手と呼ばれたOBたちの記事を参考に「エース像」を考察し、そして、昭和・平成のエースはどのようなピッチャーだったのかを書いてみようと思います。

最後まで読んでくださった方は、次回もぜひお楽しみに。

※「エースとはどのようなピッチャーか」を想像しておいてもらえると楽しく読めるかもしれません。

第2回の記事はこちらです。

【野球】エースはどこに消えた?~令和に考える新時代のエース~ 第2回 | とらのーと! TORA-NOTE
こんばんは。とらです。 あっという間に2019年の日本シリーズも終わってしまい、寂しい寂しいシーズンオフを迎えました。 (プレミア12はありますが…) 「シーズンオフ=タイトル発表時期」を迎えたわけですが、とりわけ先週発表された「沢村賞該当者なし」の影響は大きく、メディアやYouTubeなどでも話題に挙がってますよ

 

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